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貴女に溺れて彷徨う
第4章 変わらず捕まえていられたら
手入れをなおざりにしたところで肌や髪に現れやすいタイプではなかったにしても、そうしたことに無頓着だったみなぎは、少し意識を向けるようになっただけで、この四ヶ月と少しの間で美しさに磨きがかかった。背筋も以前ほど丸くなくなり、こうした騒音の中でも話している声が聞こえる。
見た目など個人を測るのに何の目安にもならないにしても、あたしがみなぎにどきりとすることが増えたのと同じで、大雅も彼女に久しく恋をしたのだろう。表情も明るくなってきた。
そんなみなぎが、最近にしては珍しく、消極的に俯いた。
「問題が一つ落ち着いたくらいで全て上手くいくなら、人の平均寿命は何十年も与えられる必要なかったわ」
皮肉にも聞こえたみなぎの言葉を、あたしには、すぐ理解することが出来なかった。
長い歳月を費やさなければ得られないものもある一方で、産まれた瞬間に得られるものもある。一生かけても得られないものもある。
それでも、不安や望みが全てなくなるほどの幸福を手に入れたとして、不要な歳月はあり得ない。仮にみなぎを手に入れられても、あたしはそれをゴールと呼ばない。
最近のUFOキャッチャーは確率が設定されているようで、キリの良い金額までコインを投入したところで、あれだけゆるかったアームはすんなりあゆみの目当てのぬいぐるみを掴み上げた。
帰りの電車で満悦しきったあゆみの顔を見ていると、みなぎとあたしまで難しいことを考えたくない気分になった。途中のコンビニエンスストアでスイーツを買って、彼女らの家に帰り着くと、あたしもお茶に同席した。