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貴女に溺れて彷徨う
第4章 変わらず捕まえていられたら
* * * * * * *
睦はあたしが危惧していた通りの感情を、ひなたに対して向けていた。
「他人を必要とするなんて、もったいないと思ってた。自分を幸せに出来るのも、無限に期待して良いのも、自分だけ。恋だの愛だのを重要視してこなかった私が、ひなたちゃんには惹かれた。彼女を好きにならなかった私なんか私じゃない、と思うほど」
睦に足踏みさせているのは、今もひなたの奥深くに根を張っている、黒いしこりだ。
それにしても、睦は二年もよく待った。あたしが彼女の立場なら、そろそろ本心に従う頃だ。
話の対象がひなたでなければ、きっとあたしは迷わず睦の背中を押した。手放しの友情だけで彼女を応援出来ないのは、あまりに身近な問題だからだ。
「前にあたしもひなたが気になってたの、覚えてるよね?なのに言ってくれて、意外とあたし、信用あったんだ。有り難う」
前は甘味も含んでいたハーブティーが、同じ茶葉のはずなのに、苦い。
睦の相槌を打つ気配を視界の端に感じながら、あたしは水滴の滲んだグラスを置く。
「正直に言って良い?」
「うん」
「ひなたのこと、愛する資格があるのかな。あたしもそうだったけど、睦にも」
「信用させられるだけの人間かっていう、あの問題?そんなの全人類無理だよ。どんなに真面目なヤツでも、百パー、魔が差さない保証はない」
「それは、そうだけど……」