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貴女に溺れて彷徨う
第4章 変わらず捕まえていられたら
ひなたは繊細で、途方もなく純粋だ。彼女を疑心の迷路に追い込むくらいなら、あたしは彼女の一時の淋しさに寄り添いたかった。それに彼女は、両親に花嫁姿を見せ損ねたことを引け目に感じている。彼らが孫の顔を見たがっていたというのも、話に聞いたことがある。
「あたしだって、ひなたなら結婚しても悔いはないし、子供だって養子や精子バンクでって考えたことあるよ。でも、ひなたに、そこまで一緒になりたい……って思わせられるのかな」
口を開けば消極的な言葉しか出ない。自分のことではない問題に自分のこと以上に慎重になる素振りを見せながら、その実、あたしは動揺しているだけだ。睦がひなたに好意的なのは目に見えていたのに、いざその事実を突きつけられると、頭も心もついて行かない。
あたしが一番、ひなたを可愛がっていると思っていた。
「莉世。違ったらごめん。聞き流して」
気の毒そうな睦の目が、あたしの心臓を抉り出すようだ。
「もしかして気になってたどころじゃなくて、今も好き?」
「…………」
そんなはずない。
ひなたと一緒にいられるだけで楽しくて、満たされる。飴みたいなあの後輩と、ただただ甘く優しい日々を重ねていたいだけだ。
この感情が恋や愛なら、世の中、ともすれば親友同士などもパートナーとして成立する理屈になる。