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貴女に溺れて彷徨う
第4章 変わらず捕まえていられたら
「響ちゃんは昔からお洒落が好きだったもんね。ウチのお母さんも、私に比べてそういうものにアンテナの強い響ちゃんに、Tenue de bonheurをよく任せたがってたわ」
「私もやりたかった。ウチはウチで、お父さんが許してくれなかったのが残念。親を手伝えって、昔から強く言われていたから」
「叔父様の仕事熱心ぶりには頭が上がらないわ。ホテルにITに薬局に……他、何だっけ」
「コンビニ。大手だってたくさんあるのに、今更、無理だって親戚一同で大反対したのに頑固なんだから。地方限定で出したら、意外といけたの。交通の不便な土地ならではの品揃えや営業形態がウケたみたい」
それだと後継者も大変じゃない、と、朗らかに笑う社長の口ぶりは他人事の話をしている時のそれだ。
響には二人の子供がいる。どちらかに継がせるのか、と問う社長は、いたずらげに彼女らを養子と呼ぶところからして、響達の秘密も知っているらしい。
彼女らの歓談がひと段落つくと、あたしは事務連絡やら報告やらをした。それから新作や限定商品のアピールについて、今一度反省点を振り返る。
「まぁ、この店舗は売り上げ良いわよ。生きたお人形さんみたいな甘利さんや、Tenue de bonheurオタクの高垣さんのお陰ねぇ」
「オタクはやめてもらえます?」
「だってそうじゃない!学生の頃からコレクションしてくれていて、入社前から色番まで把握していたのは貴女くらいよ」
「わぁっ、莉世さんそうだったんですかぁ?さすがですぅ」
「ふふっ、甘利さんも最初に比べて随分と明るくなってくれて……」