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貴女に溺れて彷徨う
第4章 変わらず捕まえていられたら
それにはあたしも同感だ。もとより二年前のひなたなら、見た目を褒められた時点で顔を背けていただろう。
社長が帰っていったあと、響が重々しげな面持ちを見せた。問えば、せりなの異動に彼女が一役買っていたらしい。
「あの通り、友達みたいに付き合ってくれている従姉妹なの。私、莉世さんに何かサプライズしたいなって、急に思いついて。悩んで悩んでいた時に、貴女と親しい伊野さんが、前からキャリアを磨きたいって言っていらしたのを思い出して、ダメ元で話してみたの」
「話して何とかなるものなんだっ?」
「普通はならないけどね」
控えめに笑う響は、今日の遭遇がなければ、この件も当分は黙っておくつもりだったという。
叔母との一件があって以来、更にはホテルで遊んでからというもの、響は胸の内をよく話してくれるようになった。ひなたとは変わらずの距離感のまま、彼女の目も、前にも増して分かりやすくなった。
「響さんって、いつもあたしがコスメ包んでる時、売り場じゃなくてこっち見てるよね?」
「バレてたか。綺麗なんだもん」
「やっぱり」
「もっと早く仲良くなれていたら、って、後悔することはある。けど、片想いくらい許して。こんなに尽くしたい、側にいたいと思える人に逢えたのは、莉世さんが初めて」