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貴女に溺れて彷徨う
第4章 変わらず捕まえていられたら
* * * * * * *
過ごしやすい気候の季節があっという間に過ぎ去った。街には、もうクリスマスソングが流れている。
いつか優香に聞いた通り、みなぎの配偶者はよそでアルバイトを始めた。その関係で、あたしは時間さえあれば、彼女が店番しているクリーニング屋に通うようになった。そして休憩時間を一緒に過ごす。
自営業の特権らしく、時間の振り分けはかなりの自由が利く。
一旦シャッターを下ろしたみなぎに付いて、今日もあたしは彼女の自宅へ伴った。
「昼休憩っていうより、もう三時。またあたしが来るまで待っててくれたの?
「ううん。この時間が一番くたびれるから、ずらせているだけ」
「お腹空かない?」
「作り置きしてあるから、蕎麦だけ茹でればすぐ食べられる。だから平気よ」
とは言え毎回、みなぎはあたしが訪ねるのをアラームにでもしているように、それまで休憩を残している。あたしに気遣わせないためか、生来真面目な気性からか、絶対に認めないにせよ。
昼ご飯は、作り置きと呼んでは罰当たりなほど、毎回手が込んでいる。いつもの弁当もカフェ顔負けだし、家で馳走になる献立も論をまたない。
朝から揚げておいたというかき揚げの入った熱々の蕎麦を平らげて、みなぎが片づけを済ませると、あたしは彼女にじゃれついた。