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貴女に溺れて彷徨う
第4章 変わらず捕まえていられたら
* * * * * * *
「あゆみの受験が終わるまで、待ってて欲しい」
冬の風が頬を撫でていく日没前、私の胸は頭上の空とは正反対に熱かった。
他人からすればつまらない学生時代を送っていたかも知れない。今となっては、昔話だ。
私は結婚も出産も経験した。莉世の言葉を流せるほどの子供心は失った。私が信じられないのは自分自身で、とりたてて用心深くもなければ、人には見せられないタイトルのDVDを所持するくらいに、色事にも無関心ではない。
莉世は最初、何の話かというような顔をした。
「好きだって、言ってくれたでしょ。ご両親の話までしてくれて。それって……そういうことだと思って良いのよね?」
我ながら自惚れた言いようだったと思う。勘違いなら一生の恥だし、昔の私なら忘れたことにして、きっと返事を促されるのを密かに待つだけだった。
逆に莉世ほど分かりやすく、しつこい相手もいなかった。過去に食事に誘ってくれる男はいたけれど、彼らは私が遠慮がちな態度をとるや、迷惑だったかと解釈して、すぐに別の女に移った。
あゆみの受験が終わったあとに、告白の返事をさせて欲しい。
私は莉世にそう返事をした。つまり返事を保留にした。