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貴女に溺れて彷徨う
第5章 見返りという甘い汁
もっと盛り上がりましょうよ、とひなたが身をすり寄せてきても、そのあとあたしはあっさり寝た。そして、結局ああいうタイプは配偶者を選ぶのではという睦の忠告にも耳を貸さず、彼女達と解散したあくる日、みなぎとよく待ち合わせていた駅へ向かった。
音信が絶えたのが、多分、せりなが婚約した頃だ。この町の眺めも久しい。
あゆみの受験でそれどころではないのだと、初めは楽観的に考えていた。それがLINEのトークルームからみなぎが退室して、流石に焦って店を訪ねると、テナント募集が張り出されていた。いよいよ嫌な予感して、自宅の方を確かめに行くと、そこも売り家に出たあとだった。
つまりみなぎの行方に関して、あたしには手がかりもなかった。
にも関わらず、懲りずに今日ここを訪ねたのは、それまで盲点としていた場所が思い当たったからだ。
あゆみはまだ小学生だ。あまりに無謀な望みをかけて、まずあたしは校区を調べて、目ぼしい小学校を割り当てた。
「申し訳ありませんが、貴女が親御さんとお知り合いだとしても、プライバシーの問題ですから、お教え出来ません」
「そこを何とか……転校先でも良いんです。住所とまでは言いませんから」
「転校は、されていま──…とにかく、ご親族の方でも、最低限、身分証はご提示いただきませんと」
一瞬、教師がまずそうな顔を見せた。それを見逃さなかったあたしは、いじらしくセキュリティーを遵守する彼女に一礼して、教員室をあとにした。