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貴女に溺れて彷徨う
第5章 見返りという甘い汁
傍目からすれば不審者である自覚はある。ここまで入り込めただけでも御の字だった。
あゆみは転校していない。友人に見限られた女を僅かにでも同情してくれたのか、教師が口を滑らせたお陰で、あたしは下校時刻まで待てばあゆみに会える可能性を見出した。
本当は、友人ではない。みなぎをそんな風に呼ぶ度に、ひなたや睦に心配をかける以上に、いつも深い罪悪感があたしを襲う。
小粒な少年少女らの賑やかな群れに目を凝らしている内に、ゲシュタルト崩壊しそうになった。同じ顔に同じ髪色。私服登校にも関わらず、本当にあゆみを見つけ出せるのかと気も遠くなりかけていたあたしの意識に、聞き親しんだ声が割って入った。
「莉世さんっ?!」
あたしを呼んだ小学生は、あゆみだ。
拍子抜けした。同時にあたしは、暗い迷路をようやっと抜け出せたほどの希望にありつく。
あゆみの様子は変わらない。むしろ以前より明るくなった。
訊きたいことはたくさんある。けれどまずは差し障りのない挨拶に始め、家を訪ねても会えなかったこと、みなぎを探しあぐねた挙げ句、その娘をストーカーするに至った経緯を弁解した。