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貴女に溺れて彷徨う
第5章 見返りという甘い汁
* * * * * * *
あゆみをみなぎに連絡させて、あたしは彼女を部屋に招いた。
ひなたからの興奮冷めやらぬ様子のLINEには、適当に返事しておく。
あたしはあゆみにハーブティーを振る舞うと、さっそくバニティケースを吟味し始めた。
「本当、合格おめでとう!中学受験って倍率やばいんでしょ。あゆみちゃんのガリ勉が実を結んだね」
「ガリ勉って言わないで。入学式までは遊び呆けるよぉ。そうそう、莉世さんありがとね。勝因の大半は、莉世さんのお陰だよ」
「二教科だけだってば。それに、あゆみちゃん可愛いからあたしも予習に気合い入っちゃって。もうあの楽しい勉強会とも、当分お別れかぁ」
「莉世さんそういうとこ正直だね。家庭教師なら、そこ、私が頭良いから教え甲斐あったとか言ってくれるとこだよ」
しばらくののち、あゆみのスマホに着信があった。みなぎからだ。
あたしは駅近くからここまでの経路を説明した地図を描いて、あゆみに写真で送らせる。
みなぎに変わった様子はない。そもそも呼び出しに応じないかも知れない、という懸念もあったのに、迷いながらももう駅まで来ているようだ。
文句の一つも言いたかったのに、顔を見れば、きっと余計な当てつけも出てこなくなる。
あゆみは受験に成功していた。それも第一志望校だ。ともすればあゆみを祝うのに夢中になっていたのなら仕方がないと言えるくらい、あたしはみなぎにめっぽう弱い。