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貴女に溺れて彷徨う
第5章 見返りという甘い汁
「久し振り。探したよ」
「……本当、しつこい女」
「みなぎの辛口、レアだなぁ。録っとけば良かった」
「からかわないで。こんな地味女を貴女が覚えていた方が、レアなんじゃない?」
「そんなに地味なのがコンプレックスなら、あたしの服、着てみなよ。きっと似合う」
唇を尖らせるみなぎから、あたしは大きな紙袋を取り上げる。重たいでしょ、とせっかく格好つけたのに、中身は妖精の羽衣のような洋服なだけあって、片手で持ち上がるほどだった。
あゆみが寝室で着替える間、あたしはみなぎにすももの紅茶を用意して、彼女にどうしていたかを訊いた。
みなぎはあゆみを褒めちぎり、あたしのヘアメイクに感心を示すばかりだ。さんざん行方をくらませておいて、まだ話をはぐらかしたがっている。
その場その場の差し当たりのない対応は、みなぎお得意の処世術。それをさんざん見てきたあたしは、余計に気になるのかも知れない。
事実、みなぎはどこか上の空だ。