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貴女に溺れて彷徨う
第5章 見返りという甘い汁


 それからあたし達は、外で夕飯をとることにした。

 今、みなぎは実家に戻っているらしい。と言ってもあゆみと大雅も一緒で、変化と言えば、家事の負担が減ったくらいだという。食事はダメ元で誘ったのに、彼女は電話一本で、帰りが遅くなる許可を得た。


「せっかくあゆみがこんな格好させてもらっているんだから、出かけないともったいないものね」

「そうそう。いくらお洒落が自己満だからって、人目に触れないのはもったいない」

「自己満って……美容部員が言っちゃう?」

「大事なことだから声を大にして言うよ。化粧や洋服は、他人に認められるために頑張るんじゃない。自分が楽しむためにある。義務でやるなら、すっぴん全裸で歩く方がマシ。しんどい」


 もっとも、みなぎならそれで歩いていたとしても目の保養だ。むしろ襲う。

 という本心は胸に仕舞って、あたしは適当なレストランを指し示す。幸い、二人の味の好みは何となくでも把握していた。

 店に入ってメニューを選ぶと、いよいよ疑念があたしを襲った。今この状況が夢だったりしないか。
 みなぎと何でもない時間過ごす。二ヶ月前はそれが当たり前だったのに、その当たり前を一度失くすと、奇跡に等しく思う。あゆみの誕生日を祝ったあの日、幸せだった。あのひとときが永遠なら、と願っていた思いが強すぎて、あたし一人が幻覚でも見ているのだったらどうしよう。
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