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貴女に溺れて彷徨う
第5章 見返りという甘い汁
「あゆみ、隣に本屋さんあったでしょ。雑誌でも見てきたら?何かあったら電話して」
「やった!あとで何か買ってね」
食後のお茶も尽きかけた頃、みなぎはあゆみが席を離れるよう仕向けた。
あたしは紅茶をお代わりして、ようやく意を決したみなぎが話し始めるのを待つ。
やっと二人きりになれた。みなぎに触れたい。キスしたい。長い間、遣り場のなかった思いの丈を、ぶつけたい。
だのにみなぎの面持ちが、あたしの喜びに歯止めをかける。
「ごめん、莉世。会いたかったし話したかった。けれど、色々あって……そんな余裕なくて」
「終わったことだし。そんな顔するくらいなら付き合って。結婚前提の同棲だって大歓迎」
「ごめん……」
「それが返事……とか、言わないよね?あんなにもったいぶってたじゃん」
「状況が変わったの。どうしようも出来ないの」
こんなに辛そうなみなぎは、初めてだ。
玄関口で久し振りに彼女を見た時、痩せたなと思った。こうして間近に見ていると、やつれてさえいる。
綺麗だった明るい茶髪は生え際が黒く、やっとストレートアイロンの味を占めたはずだったこに、今は毛先が好き放題に跳ねている。