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貴女に溺れて彷徨う
第5章 見返りという甘い汁
「分かった、みなぎ。やっぱりすぐ一緒に暮らそう」
「何でそうなるの?」
「大雅さんなんか待っててもいつまでかかるか分からない。貯金もないんでしょ。あたしならコンスタンスに学費出せるし、あの部屋、ほぼ親と同居みたいなものだから、貯金にも困ってない」
「それはそうかも知れないけど……」
「何よりみなぎを愛してる。あゆみちゃんも愛してる。良いじゃん。確かにあたしも庶民だし、節約三昧不可避かも知れないけどさ。みなぎとなら楽しい気がする」
「っ……」
未だかつてない手応えがあった。
我ながら何度目かの告白に今度こそ成功した予感がしたのは、みなぎの顔色が変わったからだ。この世の果てでも垣間見て、疲れきった女の顔が、一瞬、あたしのよく知る彼女に戻った。いや、顔だってやつれているように見えるだけで、あゆみと一緒に化粧でも直してやれば良かったと思う。
二杯目の紅茶は、飲みきる前に冷えていた。みなぎの方も同じのようで、彼女の手前のティーカップも、湯気を失くした飴色の水面だけ残っている。