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貴女に溺れて彷徨う
第5章 見返りという甘い汁

 ともすればあたしの誠心誠意は、実は伝わってもいないのか。みなぎの主張を鵜呑みにするなら、これまでのことも、いっそ悪意ととられている恐れもある。


「色々、強引だったかな。押してダメなら引けば良いの?ひなたなら、どう?」

「莉世さんは正しいですぅ」

「おっ?ひなたちゃん珍しい。稲本さんは熱がないからやめた方が、って言ってなかった?」

「ですけどぉ。莉世さんの熱は、ひぃにだって分かるくらいですよ。それに真剣な気持ちは、何度伝えたって真剣です。それをさらっと聞き流されたら、ひぃでもつらいし引きずります。そんな莉世さんに、諦めろなんて、ずばずば言うのは良くないですぅ」


 ひなたの擁護が功を奏して、あたしは睦からのこれ以上の消極的意見を免れた。

 本当は、少しは睦の意見にも耳を貸すべきだろう。みなぎを諦めても死ぬわけではない。それで余裕も生じたりして、あたしの目路は今より澄み渡るかも知れない。

 それでも今のあたしには、自分の望みに嘘がつけない。


 それから食事を進めていると、響からLINEがあった。店の近くにいるらしい。両側の席が空いていたので誘ってみると、すぐに返信通知があった。
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