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貴女に溺れて彷徨う
第5章 見返りという甘い汁
「大瀬様ぁっ、こっちですぅ」
「こんばんは。お店の外で、その呼び方はやめて下さい、恥ずかしい」
「ですかぁ?でもひぃは、大瀬様とお出かけしたりする関係じゃないですしぃ」
「じゃあ、今夜デザートご一緒しましょ。睦さん、ゴルゴンゾーラのチーズケーキ三つお願いします」
「あたし巻き添えっ?!」
「莉世さんは、別のデザートの方がお好きだったっけ?」
「……全然そういう気分じゃないんだー」
「あっ、莉世さん今日は気分激下がりなんですぅ。しばらくこんなだと思いますぅ」
見るからに舌触りなめらかで、甘くしょっぱいデザートは、あっという間に皿に盛られた。睦が持ち前の仕事の早さで、一皿ずつ、それらをカウンターに並べても、大多数の女子よろしく胸が華やがないのは、きっとあたしがひなたの言う通りの状態だからだ。
「莉世さ、響さんとかどう?」
「どうって」
「稲本さんより構ってくれるじゃん」
「そうだけどー。それに美人だしこまめに連絡くれるけどー」
あたしはチーズケーキに手を合わせて、フォークでつつく。ひなたはさっきフルーツケーキに齧りついた時と同じ顔で、さっそく青黴の入った欠片を口に入れた。