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貴女に溺れて彷徨う
第5章 見返りという甘い汁
響がここを訪ねるのは、三度目くらいだ。
初めて夕飯へ行った昨年、朝まで過ごしたあの日以来、あたし達はたまに会ってコスメの話で盛り上がったりお茶したり、手を繋いでウィンドウショッピングしたりしていた。そうして驚くほど健全な時間を過ごした帰り、ここに立ち寄ることがあった。
「でも、大瀬様って本当に理想のお姉様って感じですぅ。ひぃ、大好きな莉世さんのお相手さんには厳しいですけど、大瀬様ならやきもち焼かないかも知れません」
「有り難うございます。甘利さんって近くで見ると、ますます可愛いですね。三人で付き合っちゃいます?」
「えっ……あわっ……」
「響さん。ひなた、本気にしちゃうよ。それにこの子、夜通し元気すぎるから。お世話出来る?」
「こんなに可愛い子なら、手のかかる仔猫ちゃんだと思えば良いわ」
視界に触れるとふとした拍子に胸がざわつく、響の指先が、ひなたの白い喉を撫でる。家政婦に家事を任せているだけあって、艶やかな色の並んだ彼女の指は、ささくれ一つない。
みなぎとは運命だと信じて疑わなかった。一方で、それが思い過ごしであればと、たまにあたしは考える。
彼女を放っておけないのは、本当に恋愛感情ゆえか。下心抜きにしても、ともすればただ親しい元同級生の現状が気がかりで、恋愛をしていられないだけなのかも知れない。