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貴女に溺れて彷徨う
第5章 見返りという甘い汁
「いらっしゃいませ、響さん。新作サンプルどうだった?あたしはツボった」
「右に同じ。我が従姉妹ながら、毎度感心するわ。考えたのは、彼女じゃないけど」
「従姉妹?」
「あっ、それより莉世さん」
響は不味そうに笑って誤魔化し、あたしに顔を向けてきた。
「さっき聞こえてきたの。稲本さんのお店、そんなにお洗濯お上手だったの?」
「完璧ですよ。安いし早いし、新品みたいに仕上がりました」
「この通り。優香が常連で、こっちに閉店のクレーム来るから困ってるところ。響さん、どっか良い店、優香に紹介してあげられない?」
半ばノリで話題を振っただけなのに、それから響はしばらく考え込む素振りをした。心当たりがあるというより、彼女も優香と同じ悩みでも抱えているように見える。
しばらく様子を窺う内に、響に晴々しい顔が戻った。
「決めたわ。莉世さん、稲本さんに会わせてもらえる?」
それが無理難題だと、先週も話したつもりなのに。
響がみなぎに興味を寄せた動機について、改めて彼女に聞かされたあたしは、今度こそ腹を括った。