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貴女に溺れて彷徨う
第5章 見返りという甘い汁
「本当に良かった。響さんも喜んでるし、優香は店がなくて困るだろうけど、また連絡してやって。ってか、あたしもみなぎの今の連絡先まだ聞いてない」
「そのことなんだけど、莉世……」
…──もう会えない。
みなぎのその一言に、あたしは自分の耳を疑った。
何度も考えることはあった。まだ見ぬ本当の運命が、この想いをみなぎから遠ざけているのかと。
けれど今日またみなぎに会って、彼女の所作の一つ一つに、素朴な声に、俯きがちな表情に、視線の動きに、彼女に備わるあらゆるものに、あたしは恋い焦がれているのだと確信が持てた。実らないなら目を閉じ耳を塞いだ方がましだ、などとは思えない。みなぎがあたしのものにならないなら、いっそこの想いは消えたことにして、あの配偶者より長生きして、せめて彼女の腹心の友人として、事実の上では誰より近くで添い遂げたい。
「じゃあ、みなぎが新しい生活に慣れるまで、もう少し待ってる」
「ううん。きっと、気持ちの整理がつくことはないから……」
「そんなに忙しい?自営と違って連休だってしっかりあるし、最初は大変でもいつか落ち着くよ」
「そうじゃなくて……っ」
あゆみのために、響の話は引き受けた。それだけのことで、仮に大雅を見限ったとしても、それとあたしの告白とは関係ない。
それがみなぎの言い分だった。