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貴女に溺れて彷徨う
第5章 見返りという甘い汁
あたしは驚く。こうも素直になれる響に、こうもいじらしくなれる彼女に、こうも可愛い女が目の前にいて靡こうとしない自分自身に、あたしの思考は混濁する。
「みなぎも、嘘でもそういうこと言ってくれたらな。そんな歯の浮くこと言ってくれるの、響さんだけだ」
「私は、嘘でも冗談でもないよ」
「ありがと。響さんといると、本当に癒されるよ。みなぎには何言ってもダメな風にとられちゃうから。あたしみたいなヤツ、マジで無理なんだろうな。見かけほど全然チャラくないのに」
「仕方ないわ、莉世さんにそのつもりはなくても、モテるのは事実だし」
「まじで愛してくれそうな人がいなかったから、マッチングアプリ使ったんだけどね」
響が神妙な顔を見せた。工場の責任者を探していたのは事実だ、けれど何より貴女の悲しむ顔を見続けていたくなかった、と、綺麗な爪の並んだ指にぎゅっと力を込める彼女。その思いつめた眼差しが捉えたがっているものに、いつでもあたしは気づかない振りを貫いている。