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貴女に溺れて彷徨う
第6章 苦みを消した実利の飴
つまりお前も教えられないんじゃないか。
こみ上げてきたものを圧殺して、麦茶を飲む。ニュースを見ているはずの父は、私がコップ一杯の麦茶を飲み干すまでの間中、非生産的な小言を続けた。
「お前のその格好も、地に足着かない原因じゃないか?」
ガーリーテイストの洋服専門の仕事をしている父は、相変わらず家ではこの言いようだ。
「チャラチャラした服ばかり着て……。社割で買えるから金は助かるけどな、もっとマシなのもあるだろう。お前それ、二十歳になってもその格好するのか?校則には、校外でも学生らしい服装をしろと決まりがあるんだ、その変な散髪も、今度こそやめろな」
ちなみに私は、学校で断固禁じられているパーマも染色も肌を見せるファッションも、したことがない。
顔周りの髪を短くする姫カットが女子の伝統的な定番であることも知らなくて、パステルカラーのロリィタファッションは成人女性が圧倒的人口を占めることも知らない父に、大瀬さんの店専属の工場責任者が務まるのは、彼女の朗らかな人柄と、母の知識が助けになっているからだろう。