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貴女に溺れて彷徨う
第6章 苦みを消した実利の飴
中学三年生になった私は、今でも数学の授業を受けるために、当時の塾に在籍している。ただし公立に通う受験生達はいよいよ本腰が入る時期で、教師達もそうした塾生のために授業を行う。
つまり私は、学校でも理解出来ないものを、塾で親身に解決してもらえているわけではない。
私語や居眠り常習犯でも、私よりは授業を理解している。それなのに、私は結果が伴わないだけで、不真面目な彼女達より大人から得る評価が低い。もとより学校でも塾でも個人授業を頼んだこともあるだけに、生来、私は勉学に弱いのだ。
「あゆみ」
耳にたこが出来るほど、一日に何度も中間考査という単語が入るようになって数日経ち、せめて早く登校して友達との息抜きにありつこうと急いでいた私を、玄関で母が呼び止めた。
「お母さん。行ってくるね」
「行くのは良いけど、試験前くらいツインテールはやめなさい。そんな余裕はないでしょ」
「これ、手間のかかる髪型でも何でもないけど」
「先生達からすれば、そんなこと分からないの。ふわふわしているように見えるの。もっと結果の出せる子だったら、お母さんもあゆみが好きな格好で楽しめば良いと思うけど、人一倍勉強してもあゆみの苦手はどうにもならないんだから、せめてちゃんとした格好でいて頂戴」
「……行ってきます」
「ちょっとあゆみ!明日からね、そのリップも、学校着いたら拭くのよ!」