この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
貴女に溺れて彷徨う
第6章 苦みを消した実利の飴


 吉沢先生、吉沢ゆずは。

 美大を卒業して今年で三年になる彼女は、思春期の面影もまだ僅かに残る顔をくしゃりと崩して、理香子達にせがまれるままテーブルの側に腰を下ろした。次の部屋の点呼へ行かなければいけない、と言いながら、長い茶髪を耳にかけて、シャーペンを握る。私達が無秩序に落書きしていた自由帳も、彼女が鉛の芯を滑らせた途端、たちまち上等な画紙に変わる。

 吉沢先生の絵は魔法だ。線自体は単純なのに、何もなかった平面世界に、少女だったり動物だったりが見ている内に現れる。彼女には、私達には見えないものが見えてでもいるのか。今も、隈井さん達の盛り上がっていた漫画の主人公達が、見事な特徴を捉えて出来上がっていく。彼女の持ち味もしっかり生かして。
 七分袖から伸びた手首には、カラフルなビーズのブレスレット。シャーペンを動かす指先には、クリアカラーのネイル。些細なところにも彼女のセンスを感じられて、気づけば私は、絵より彼女自身を見ていることがよくあった。

 十二分で完成した少女達のイラストは、吉沢先生が退室したあと、公平なじゃんけん勝負の結果、美代が持ち帰ることになった。私がその悔しさをぼやくと、吉沢先生は私の頭を優しく撫でた。


「そんなに嬉しいこと言ってくれるなら、稲本さんには、今度ちゃんと画用紙に何か描いてくるわ」

「本当ですか?!」

「何が良い?」


 私は返答に悩む。

 夕食後、消灯前の集合時刻までの合間、私は吉沢先生と旅館の裏庭に出ていた。
/254ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ