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貴女に溺れて彷徨う
第6章 苦みを消した実利の飴
* * * * * * *
睦が閉店業務を終えると、あたし達は電車で一駅移動して、彼女の部屋に押しかけた。
響もすっかり常連だ。
みなぎと別れた二年前の春、あたしは響に告白した。養子の下の子が高校を出るまで彼女の自由は利かなくても、あたしは彼女の特別ではなく、日常の一部になりたかった。そうしてあたし達の会う機会が増えた分、彼女らの交流も深まったのだ。
化粧を落とすと顔が軽くなる。昼間は立ちっぱなしだった身体を洗って、浴槽で頭を空っぽにしていると、やっと人心地がついた。ほど良く上る蒸気の中に、ひなたか響かの残り香を感じる。
浴室を出ると、身体を拭っている間にも、甘えたな飴のような声がリビングから漏れてきた。
「響さんお化粧落としてもお肌モチモチで、ひぃ、尊敬しますぅ。生まれつきですか??それとも秘訣があるんですかぁ?」
「ひなたちゃんこそ可愛くて綺麗よ。……そうねぇ、強いて言えば、毎日貴女達みたいに魅力的な女性を見ているからかな。ときめきは美容に良いから」
「もうっ、睦さんみたいにキザなんですからぁ」
「そこで私を持ち出す!?」
「あ、莉世さんおかえり」
あたしは響に濡れた髪を委せながら、ネットで面白い記事を見つけたというひなたスマートフォンを覗く。
美容師とはまた違う、慣れていない指の動きは、あたしの髪だけはよく知っていて、ドライヤーの風を連れた手つきにうっとりする。主人に戯れる猫のようにあたしに唇を寄せるひなたの胸に片手を伸ばしてからかいながら、響に顔を向けてキスをする。
「ぅん……ハァッ、……莉世さん……」