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貴女に溺れて彷徨う
第6章 苦みを消した実利の飴
「いらっしゃいませ。いつも有り難うございます、あゆみさん」
「大瀬さん。こんにちは」
「トップスお探しですか?」
「はい。最近暑くて、薄めの軽いものを。ピンクか、たまには冒険してみようか悩んでいます」
「あゆみさんなら、ピンクのイメージ強いですもんね。でも、冒険も楽しいですよ。そうだ、あゆみさんは常連さんで知り合いですし……」
声を潜めた大瀬さんが、周囲を見回す。間近に迫った彼女の顔はひときわ綺麗で、私は条件反射的な熱を覚える。
「何かプレゼントさせていただきます」
「えっ!?」
数着のカットソーを選び取った大瀬さんは、私を半ば強制的に更衣室に押し込めた。
手にするだけで胸がときめくようなカットソーに袖を通して、着替えるごとにカーテンを開けて、大瀬さんに披露する。きっと美意識も並外れているはずなのに、化粧も見様見真似に施しているだけの中学生に、大瀬さんは可愛いだのどれも似合って決められないだの、人形遊びをしている少女のように私を褒める。
結局、私は一円も使わないで、スカートとサンダルまで手に入れた。気兼ねして辞退を試みても、大瀬さんは、自身を飾る努力をしようとしている女の子に手を貸さないのはもったいないない、の一点張りだ。