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貴女に溺れて彷徨う
第6章 苦みを消した実利の飴
「本当に有り難うございます。私なんかより、もっと常連のお客さんだって、もっと素敵な方だって、たくさんいるのに……」
「ご自分を周りと比べても、大した参考にはなりませんよ。それにあゆみさんの親御さんには、とてもお世話になっていますし」
カウンターでは、私も顔見知りの従業員達がレジを打っていた。今の客で、ひとまずの波は落ち着くようだ。
「大瀬さん」
最後の客が出て行った時、私は思わず口を開いた。
「もしかして私、不細工なんじゃないかって……悩んでるんです。変だと思いますか」
大瀬さんが目を目をまるくした。
当然だ。容姿も家柄も性格まで非の打ちどころがなく、何より自由で誰にも指図される謂れのない大瀬さんに、私の日常は想像つかないだろう。
大人とか子供だとかは関係ない。学校にも、既に親の監視の薄い女の子達は何人かいて、ある程度の行動の自由は許容されている子ともなれば、もっといる。保護者の信頼が厚いからだ。特に親がお洒落に協力的な子などは、私が父に浴びせられている類の非難とも無縁だ。親の方も文句をつけられなくらい、好きなものに見合った見た目だからだと思う。