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貴女に溺れて彷徨う
第6章 苦みを消した実利の飴
「あ、誤解しないで。だからって莉世さんの幸せを否定したことは、一度もない。私の勝手で、莉世さんが誰かと一緒になることを嫌がるなんて。ただ、私は貴女の恋人になりたかったんじゃなくて。ずっと憧れていたかった」
「だから別れたいって、響さんは言ってるの?」
「ええ」
「あたしには響さんしかいない。もし今のあたしが響さんの理想じゃなかったんなら、一人になったって同じだよ。元々、こういう人間だっただけ。多分、響さんの思ってる片想いは出来ないよ」
「そうかも知れない。でも莉世さんは、私以外にも選択肢がある。一度しっかり考えるべきだわ」
いやになるほど考えた。
響と久し振りに身体を重ねた夜、あの時も、彼女はあたしに丹心を伝えながら、後腐れは望まなかった。それでいて、みなぎとは違った。響ならあたしを一人にしないと、確信を持てるだけのものはくれた。
実際に彼女を恋人と呼んで二年と少し、恥ずかしいほどあたしは彼女を慕うようになった。自分が自分でなくなるのではと思うほど。
「…………考えさせて。響さん、来年になったら一緒に暮らそうって言ってくれるんだと思って来たから、すぐ納得出来る気分じゃない」
これ以上話したら、響はあたしを無理矢理にでも頷かせる。何故、誰も愛してくれないのかと、あたしは自分に失望する。
動悸を気のせいだと思うことにして、あたしは先に一人で百貨店を出た。