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貴女に溺れて彷徨う
第6章 苦みを消した実利の飴
次の土曜日、あたしは響の指定したカフェに足を向けた。
あたし達の地元のどちらでもない駅に降りると、休日の昼近くにしては中高生を頻りと見かけた。チェック柄の大きなリボンが胸元を飾る生成のブラウスに紺色の長い丈のボックススカート、やはり紺色のベストといった彼女達の制服は、私立の女子校のようだ。さっきから男子生徒がいない。
「いらっしゃいませ。お一人様ですか」
「待ち合わせしてます。えっと、……」
店内に、あたしはすぐ響を見つけた。
一瞬、人違いかとも思った。緩く巻いた短い茶髪、席に置かれた彼女お気に入りの某ハイブランドの限定バッグが一致しなければ、あたしは入り口側に背を向けたその人物を、響と確信出来なかったかも知れない。何故ならあたしは、彼女が一人で来ているつもりでいた。
響の正面側に座り、メニューをめくっている女の子。
あたしは彼女に見覚えがあった。
「あゆみちゃん……?」
ツインテールの黒髪に、人懐こそうで清楚な顔立ち、少女らしい愛嬌を備えていながら、小学生の頃から垢抜けていたあゆみは、薄化粧してAngelic Prettyのピンク色の洋服を着ていると、記憶の彼女よりずっと明るく見えた。背も伸びたし、何と言っても大人びた。
響とあゆみが交流を持った経緯については、想像出来る。