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貴女に溺れて彷徨う
第6章 苦みを消した実利の飴

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 あたしはおよそ三年振りに、あゆみの勉強を見てやることにした。
 彼女の当面の目標は、一週間後に控えた学期末テストだ。中学受験は猛勉強で詰め込んだものの、進学後は元の具合に低迷して、例のごとく理数が彼女の足を引っ張ってきたという。

 翌週、あたしは店を上がったあと、学校帰りのあゆみと待ち合わせした。

 セルフサービスの手頃なカフェは、他の生徒達も自習の場に利用していた。今日はあゆみも見覚えのある制服姿で、先日この近辺で見かけていたのは、彼女の学校の生徒達だったらしい。


 私学の授業は進学塾レベルというのをいつかどこかで聞いていたのは、本当だった。今日に備えて、三年前と同じく古い教科書を読み直しておいて正解だったと、あたしは胸を撫で下ろす。


「やっぱり莉世さんは教え方が良い!一どころか、マイナスくらいから教えてくれるもん。学校も塾も、そういうわけにはいかないよ。ここまで分かってて当たり前ーみたいな感じで、生徒を選ぶって言うのかな、全然理解出来なくて」

「みなぎは記憶違いしてるみたいで、あたし、理数も人に教えられるレベルじゃなかったからね。他に比べてマシだっただけ。特に世界史や古文はボロボロだったから、ここまで分かるの当たり前、みたいな、専門分野の先生独特のあれ。あゆみちゃんが不親切に思うのすごく分かる」

「私だけじゃなかったんだー……。しかもお父さんなんて、なんでこうなるのか分からないって言っても、理屈は良いから覚えろ!の一点張り。理屈が分かれば覚えるよー」

「それを説明するの、大変だからね。ってか、急に訊かれても答えられる大人はいない」

「分からないんでしょ、って言っても、ウチの親は絶対否定するけどね」
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