この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
貴女に溺れて彷徨う
第6章 苦みを消した実利の飴


 あゆみの顔は、話すほど明るんでいく。
 よほど鬱憤を溜め込んでいたらしい彼女とはよそに、あたしの胸の奥底は、温かいミルクがぽかぽかと広がっていく心地を得ている。
 あゆみの話の節々に、忘れ難い、彼女の母親の影を見る。みなぎの気配を探しながら、三年前、どれだけ日々が満たされていたかを思い知る。

 みなぎにとって、あたしは何でも構わなかった。ただあたしの知らない歳月に、彼女をいさせたくなかった。


「母親らしくしてたんだ、……みなぎ。真面目なとこ、──…」


 いつまでも可愛い、と喉まで出かかった言葉を引っ込めた。



「元気で、安心」

「楽しそうじゃないけどね」

「仕事、大変なの?」

「それもあるかも知れないけど、莉世さんが会ってあげなくなってから、友達もいない石頭になっちゃったよ。融通利かないの、悪化してる」

「生まれついた性格は、簡単に変えられないからね。本人は、あれで結構、楽しんでたんじゃないかと思う」

「私にはそうは見えないよ。莉世さんと会ってた頃は、マシになってたから……。あの頃のお母さんは、本当に活き活きしてたよ。お風呂上がりに化粧水やパックまでして、却って心配だったくらい。私の話も、もっと笑って聞いてくれてた」



 あゆみとあたしは、すっかり話し込んでいた。窓の外は、ブルーグレーの夜の兆しが覆っている。

 周囲の女子生徒達がレジへ向かう頃になり、あたしもあゆみの門限を確認する。響に勉強を教わる口実で出てきた彼女は、あと一時間は大丈夫だと答えた。


「じゃあ物理もやっとく?最終日なら後回しでもいけるかと思ったけど」

「うん。まずどこが分からないか今、分からないから、ざっくり見ておきたい。その前に、莉世さん。個人的な相談……と言うか、客観的な意見を聞きたいことがあって。良いかな?」


 あゆみの視点でみなぎに関する話なら、聞き尽くしたと言えるほどには聞いた。けれどそれとは違う話の予感がしたのは、今からの話こそ本命だったのではと見られるくらい、あゆみが神妙な面持ちになったからだ。
/254ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ