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貴女に溺れて彷徨う
第6章 苦みを消した実利の飴
パウダーパフやメイクブラシ──…みなぎに触れた羨ましいメイクツールを全てあたしの手元に置いて、愛で続けたい。けれど洋服も下着もすっかり元に戻ったみなぎの手持ちを考えると、予めあたしは未開封のコスメばかりを使って、久々に見る彼女の顔が完成すると、それらほとんどを紙袋にまとめて彼女に押しつけた。
「えっ、悪いって……それに、普段は使えないだろうし……」
「使ってよ。本当に似合うもん。セールストークは一切ないよ。これが本心だからこそ、無理にでも持って帰らせたいの」
「でも、私に、こんなピンクメイクは痛いと……
「いつまでも眺めていたい。あ、もし遠慮してくれてるなら、お返し頂戴」
「何?」
「今日貸してる下着、洗わず返して」
「…………っ」
仕上げにプラムブラウンのマスカラを塗って、あたし自身も化粧を終える。
ポーチを締めて、ふっくらとした彼女の頬に指を伸ばすと、濃さを増した血色を裏づけるだけの熱を得た。