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貴女に溺れて彷徨う
第6章 苦みを消した実利の飴
みなぎ達があたしの部屋に暮らして四日目。
今日からあゆみの期末考査が始まって、みなぎも仕事を再開した。工場ではなく、響の営む古着屋だ。引っ込み事案な彼女への配慮は抜かりなく、割り振られる業務は主に品出し、検品、店内整理だという。
この四日間、躊躇いながらもみなぎはあたしの洋服を着て、化粧もさせてくれている。先週から、彼女に初めて化粧した三年前の感動を何度思い出したことか。
素朴で、けれど無垢な素材をあたしの色に染めてみたいという創作意欲が、きっかけだった。それだけではなかったのだと意識し出したのは、彼女と身体を重ねるようになってからだと思う。二度目の再会を果たしてから、みなぎというキャンバスに手を加えたいという欲望は濃度を増した。
あたしがみなぎと行動していることに関して、睦は深入りしなかった。今夜も客が増えてきて、対応に追われそうなのもあるのか。あたし達に酒を出して、ひなたと来る時と同じ具合に、夕飯を用意してくれた。睦が例の後輩とも繋がりがあると前置きしたのが良かったのか、みなぎもそれなりに打ち解けていった。
「ま、可愛いタイプだね。莉世が気に入ったのも分かる」
「睦さん……からかうのは、よして下さい」
「本心ですって。自信持った方が良いですよ。それに莉世、しつこいでしょ。稲本さんがうぶなほど、余計にちょっかいかけたくなるんじゃないですか」
「睦っ、それ、あたしがパワハラしてるみたいじゃん!」
「結構、キワどいとこだと思うよ。それはそうと、今でも本気?」
「うぅ……一応、友達……」
みなぎが席を外したところで、睦があたしに顔を寄せた。
話の流れだったにせよ、もう核心に迫っていたのに、これ以上どんな話題に声を潜める必要があるのか。