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貴女に溺れて彷徨う
第6章 苦みを消した実利の飴
「めっちゃ好きじゃん」
「えっ?」
驚くほど軽い、それでいて重みを含んだ一言に、あたしは胸が跳ねそうになった。
「友達なんて、嘘だろ」
「…………」
「さっきから飲み合いっこしようだとか、リップ崩れてるとか。スキンシップだって、響さん相手でも、そこまでしてるの見たことない。本気だと、そんな風になるんだ?」
「こっ、こう見えて、友達想いの良い子なの!あたし」
「ま、良いけどさ」
「睦こそ、──…」
そこであたしは口を噤んだ。
いつひなたに告白するのか、あたしには関係ない。
ただ、みなぎの事情もあたしに介入しきれることではないにしても、彼女は理屈なしで放っておけない。きっと彼女は、自分のために何かを決めたことがない。わがままになったことが。もう十分に、稲本大雅に心を削った。あゆみのために生きてきた。彼女を元いた場所に戻せば、また死んだ目をして生かされるだけだ。
「人は、確かに一人じゃ産まれられないし、一人じゃ生きられない。でも、睦ならあたしの言いたいこと、分かってくれないかな。せっかくの命、他の誰かのために使って良いわけないよ。自分だけのものだよ」
「……それは、ね」
「みなぎが周りばかり気にするの、見たくない。自分のこと可愛いって、我慢ばかりしないで欲しい。そのためならお姫様扱いだってして当然なの」
三年もみなぎから目を背けてきたことへの後悔が、一秒ごとに膨らんでいく。彼女のための時間や気持ちは、苦しくて辛いわけがなかった。