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貴女に溺れて彷徨う
第6章 苦みを消した実利の飴

 Tenue de bonheurの熱烈なファンである響は、相変わらずほぼ片っ端から予約している。
 今秋第二弾も、四色あるアイカラーパレットの内、二色に始まり、カラーマスカラは結局オレンジを除く全色だ。ネイルも定番色によほど近くない限り、悩むなら買っておいた方があとになって困らない、というのが彼女の持論だ。それにはあたしも同感だ。


「ひなたさんも、こうして見てると近寄り難いかも。どこか遠くの人みたい」

「隙ないもんね。ひなた、昔は防御固かった分、マニュアルが染みついてるから」


 とは言え、あたし達の視線の先で常連客に付いている後輩は、愛嬌溢れる笑顔を振る舞っている。昔と違って見えないバリアが彼女を護っているのではないにしろ、彼女の底知れない眩しさは、距離を誤れば身を焼かれるのではないかと思う。


 予約票の控えを響に渡して、今日の購入分を確認する。フェイスパウダーとシェーディング用チークの補充だ。

 会計を済ませて包んでいると、急に響が神妙な顔を見せた。
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