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貴女に溺れて彷徨う
第6章 苦みを消した実利の飴

* * * * * * *

 それからしばらくのち、あたしはみなぎに質問を受けた。響との関係についてである。

 休みの日、母娘水入らずで出かけていた彼女が帰宅した時のことだ。

 響が思い直してくれないかと僅かにでも期待して、粘って先延ばしにした末の決断だったのにも関わらず、みなぎに彼女との交際を否定しても嘘にならない現状に胸を撫で下ろしたのは、気のせいだと思いたい。


「今は付き合ってないよ。あ、味噌汁、白か赤どっちにしよう?」

「白味噌」

「了解」


 今は、という言葉にみなぎが注意を向けなかったのは、着替えや、あゆみに買ったものが皺にならないよう吊るすことに気を取られていたからか。

 あたしは白味噌を出し汁に落とす。一時期でも愛した人の帰宅に合わせて夕飯を準備するのが当たり前になるなんて、不思議な気分だ。


 クーラー対策に愛用しているLIZ LISAのシースルーパーカーの隣に、あゆみの華やかで可憐なサマードレスを始めとする洋服が並んだ。ブランドタグからして、響の店ではないらしい。

 あゆみは、一学期の通知表が全教科3以上という結果を収めた。夏休み前の三者面談で、期末考査の成績も中間に比べて上がった、この調子なら条件なしで高等部に進学出来ると担任があゆみを褒めてから、みなぎは一段と機嫌が良い。
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