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貴女に溺れて彷徨う
第6章 苦みを消した実利の飴
* * * * * * *
翌日、あゆみが夏休み中は週二回行われる美術部の活動に出かけたあと、あたしは洗濯物を干していた。
みなぎもあたしも、今日は午後からの出勤だ。
傍らで、あゆみの洋服を回していた洗濯機が濯ぎ洗いを始めた頃、みなぎがベランダに出てきた。
「昨日、莉世が言ってくれたこと。今度こそ真剣に考えさせてもらいたくって。……あれ、私なんか相手に本心?」
陽の光を浴びたみなぎは、天使のように愛くるしくて美しい。
ひなたや響に通じるような完成された美と言うよりは、内側から滲み出す、優しく柔らかな引力だ。その引力をあたし以上に見出せるのは、きっと他に誰もいない。
やっぱり好き。……みなぎが。
確かにそう口にしたことを、もちろんあたしは覚えている。
稲本からすれば友情として解釈したからこそ、話し合いは穏便にまとまったのだろうにしても、みなぎから掘り起こしてきたのは予想外だった。自己評価の低い彼女のこと、あんな状況下であたしが響に言った一言など、聞き流すと思っていた。
「あ、そんなわけないよね。今のなし、気にしないで」
「みなぎ」
「私は莉世みたいなタイプが苦手だったし、信じなかったし、色々と誤魔化していた。妬みもしていた」
こんな醜い女、と、ぼそぼそとした声をいっそうすぼめたみなぎの肩を引き寄せた。
それ以上は言わないで。
自分自身を卑下するみなぎの言葉を言葉で制止するのももどかしくて、あたしは彼女の唇を塞ぐ。
指先でじかに触れるだけの塞ぎ方、これさえ、いつ振りか。