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貴女に溺れて彷徨う
第6章 苦みを消した実利の飴
持って生まれた性格は、矯正出来ない。もとよりその必要もない。
あたしが許せなかったのは、その性格が彼女を削ってきたことだ。傷つくべき仕打ちに遭っても、まるく収めようとして、痛みも否定していたことだ。相手が稲本の時とは限らない。いつでも優しい人間に限って、損をする。
洗濯機は止まっていた。
いつもなら皺になると言って飛びつくのに、みなぎは気にも留めないで、あたしを見ている。
「高校生の頃に戻って、みなぎの最初で最後の人になりたかったよ。……」
「ううん」
あたしの手が、ふっくらとした温かな手に包まれた。
「最初じゃなくても良いじゃない。最後の人に、なってくれれば」
こんなご都合主義があるだろうか。
夢でも聞き違いでもない。