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貴女に溺れて彷徨う
第6章 苦みを消した実利の飴
それからあたし達は二人で洗濯物の続きを済ませて、部屋に戻ってまたキスした。
心置きなくみなぎを見つめて、指を絡めて、じゃれつく。
仲良しの友人同士ならごく自然なふれあいでも、あまりに彼女を意識していたあたしには、無邪気なノリでは出来なかった。
昼ご飯を食べながら、あたし達は他愛のない話をした。
三年前と違って、時間は限られていない。貪るように触れ合わなくても、これが最後だと言わんばかりに交わらなくても、朝起きれば彼女がいる。家に帰れば、共に過ごす日常がある。
永遠の中のひとコマで、みなぎは響の店での話を楽しそうに披露した。接客も覚えれば、と言うあたしに、それは敷居が高いと言って、彼女ははにかむ。
「そうだ、私、今日遅くなるから」
「締め作業?響さん、みなぎには夜道歩かせないでって言ってるのに……」
「学生の子達が部活の合宿なんだって。あゆみは美術部だからそういうのがないって、毎年羨ましがってるわ」
「そっかー。帰宅部もなかったな。こっち早く片づいたら、一緒に帰ろ」
「莉世もラストまでなのね。甘利さんは、良いの?」
「もしかしたら来たがるかも。騒がしくて良い?」
「一人くらい増えても、私は良いわよ」
…──じゃあ改めて、みなぎをひなたに紹介するね。
そう言ってテーブルを片付け始めたあたしの視界の端に、俯きがちに笑みをこぼすみなぎが映る。
響の口癖のようだった奇跡をあれだけ否定しておいて、今になって、あたしはそれを実感している。