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貴女に溺れて彷徨う
第6章 苦みを消した実利の飴
コンビニで夕飯を買って、ひなたとあたしは、近くのビジネスホテルへ足を向けた。睦の店へ行くものとばかり考えていたのに、ひなたが言うには、なるべくひとけのないところが良いらしい。
「例えば。自殺を考えている、なんて相談、公共の面前で出来ますかぁ?」
一見キラキラした飴みたいな後輩は、随分と不健全な爆弾を、内側に抱えているらしい。
一人客が多く見られるロビーでチェックインして部屋に着くと、心なしかひなたの顔色が良くなっていた。鼈甲色の薄闇が、彼女の青白さを覆っただけかも知れないけれど、まずはテーブルにサンドイッチやお茶を出して、二人並んで手を合わせた。
「それで、ひなた。悩みって?」
デザートのプリンまで平らげたところで、あたしはひなたに本題を促した。
食欲も平常運転で、プリンを開けた時は食べさせてくれとねだったり、今しがたまで、彼女は悩みについて一切触れることがなかった。
さすがに今夜は、帰らなければまずい。
「もう、話しました」
「え?」
「さっきも話しましたし、それまでにも、ひぃは、莉世さんに何度も話しています。ひぃの、悩み」
「──……」