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貴女に溺れて彷徨う
第6章 苦みを消した実利の飴







 久し振りに恋をした女に今日、五年越しに告白された。

 そのことをみなぎに話すと、いくら何でもあまりにあっさり納得した彼女に、あたしは拍子抜けした。


 あたしはひなたの想いを受け入れた。彼女の気迫に押されたのではなく、無邪気さに毒気を抜かれたのだ。

 ひなたは手の届かない存在だった。ほとんど毎日顔を合わせて、その肉体を知り尽くしてきたにも関わらず、あたしは彼女の奥深くに触れることを避けていた。彼女の綺麗な部分だけ、愛でていられれば満たされていた。


 けれど、誰よりひなたの近くにいたあたしは、誰より彼女との将来を想い描ける。彼女のいない明日以降など、それはもうあたしの日常ではないんじゃないか。


 みなぎに別れ話をしたいから、何より昨日の一件もあって、今は彼女を一人にさせたくないと言ったあたしに、ひなたはようやく納得した。


 終電間近に帰宅して、今に至る。


「甘利さんなら、仕方ないよ。私だって悔しいけど、彼女か私、どちらかが莉世を諦めなければいけないことには変わりないわ」

「本当に、ごめん。みなぎのこと、ちゃんと責任取るつもりで奪ってきたのに」

「ううん。莉世があの時、連れ出してくれたから、あゆみも私も自分の気持ちと向き合えた。大瀬さんとも話して、大雅みたいな人は珍しいんだって……少し前の私みたいに、我慢することが普通とは限らないんだって、気づけたから」


 あゆみは昼間に遊び疲れたらしく、もう眠っているらしい。

 あたしはみなぎの片づけを手伝いながら、彼女らが今夜の食卓で話し合ったことを聞く。
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