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貴女に溺れて彷徨う
第1章 眠り姫は魔法で目覚める
* * * * * * *
変わり映えしない平凡こそ常識で、目も覚めるような刺激を求めたが最後、私のせっかく生まれ持ってきた穏やかな日々は崩れ去る。無難に静かに生きるための代償が、多少おとなしくしていることくらいなら、安いものだ。
そんな私の常識に、よりによって関わりたくないワースト上位に入るタイプの女が罅を入れた。
私が地味で冴えないからだ。
高垣さんの化粧に溜め息をこぼし、彼女の横暴に恍惚として、挙げ句、何年か振りに果てた。
事前の心理操作の罠に嵌まったのか、心なしか肌が潤った気がした私は、その場の感動にそそのかされて、彼女を訴訟しようとも思わなかった。そればかりか、親切に駅まで送った。もとより、もし訴訟を起こしていたら、私が良人にも娘にも隠しているDVDが、彼女の口から白日の下に晒される。
かくて私は、ポルノ作品の所持より遥かに恐ろしい秘密を高垣さんに預けたことにも気づかないで、呑気に夕餉の支度を進めていた。
「ただいま」
「お帰りなさい、あゆみは今日九時までだから、お弁当持たせたわ。ご飯よそうね」
身なりを整えて部屋を出た時、置き手紙を添えた弁当はまだキッチンにあった。高垣さんを送り届けて帰ってくると、なくなっていた。従って、娘がランドセルを置きに帰った間、私は家にいなかった。いつもなら残念に思うのに、今日は胸を撫で下ろした。