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貴女に溺れて彷徨う
第1章 眠り姫は魔法で目覚める

* * * * * * *

 数日後、みなぎからLINEが届いた。

 僅か数行の文面は、マッチングアプリで複数の女からメッセージが入った時などとは比にならない感動を、あたしに与えた。

 頼みがあるという前置きに、飛びつく勢いで返信すると、ややあってまた通知を受けた。

 それから会う予定が立つまでは、あっという間だった。更に二日のちの土曜日、彼女の住むのどかな町に、あたしは再び訪ねていった。


「わざわざお運びいただいて、恐縮です……」

「良いって。娘さんの勉強見れば良いんでしょ。この前は訴えられるかと思って、ちょうど内心ビクビクしてたし、これでチャラね」

「いいえっ、主人の手前、家庭教師を探せないだけで……確か高垣さんは、理数系がお得意だったなと。お金はお支払い致しますので……」

「堅苦しいなぁ。ってか、やっぱあたし上手かった?じゃあお金じゃなくて、次も身体でお支払いしてもらおう」

「っ……」


 みなぎの顔が、見て分かるほど上気した。

 聞けば、あゆみという小学六年生の一人娘が来年、受験を控えているらしい。苦手科目の成績が伸び悩んでいて、みなぎの良人は小言ばかりで、責任は彼女に丸投げしている。彼女自身も、受験レベルの勉強は教える自信がないという。

 そこまではLINEで聞いていたので、昨日、あたしは久し振りに実家に戻って、中学時分の教科書を読み漁った。実家と言っても、今暮らしているマンションの部屋の隣だ。いきなり復習を始めたあたしに、母が目を丸くしていた。
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