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貴女に溺れて彷徨う
第1章 眠り姫は魔法で目覚める
「やばい……惚れる……」
曲が終わる頃、あたしは鳥肌が立つほどの感動を覚えていた。みなぎの真剣な横顔が、目蓋に焼きついて離れない。
「恐縮です。……お恥ずかしながら、やっぱり楽しかったです」
「もっと堂々とすべきだよ!ドヤ顔で、歌上手いって自慢した方が良いよ!」
「自慢出来るような友達も、いませんから……」
マイクを置いた途端、みなぎは猫背のいつもの彼女に戻った。
二曲目はあたしが歌うことになった。
まずは何も教えないから聴かせてくれというみなぎの指示に従って、選んだのは救いようのない恋愛ソングだ。通勤時間よくリピートしている内に、このアーティストの楽曲は、ほとんど頭に入っている。
歌い終えると、みなぎはあたしが彼女にそうしたように拍手した。
「畏れながら、正直に申し上げます」
「待ってました、先生!是非、辛口の評価を……」
「全く悪くないんです。暗譜も完璧、声はさすがです。陽キャの人って何でそんなに通りやすいんですか……」
「陽キャじゃないよ。陰キャでもないけど」
「ただ、もったいないです。ふわふわされている、と言えば分かりますか?特に今歌われた曲は、感情表現をされたらもっと素晴らしくなると思いますので、まずは声に説得力を培うべきです」
「感情……説得……?」