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貴女に溺れて彷徨う
第1章 眠り姫は魔法で目覚める

* * * * * * *

「莉世さん、また例のマッチングアプリですかぁ?」


 普段から甘いソプラノが、炎天下の窓辺に放置した飴みたいにどろどろにとろけそうな具合に輪をかけて、あたしの意識に割り込んできた。

 声の主は、見事な凹凸の華奢な身体をピンク色のシースルーのスリップに飾って、ソファに尻を沈めている。ブラジャーは器用に除かれていて、乳首は丸出し。細い腕を後ろに固定した鮮やかな色のロープが上体を締めつけ、形の良い胸が必要以上に突き出している。


「ァンッ、やぁん……恥ずかしい、ですぅ……」


 彼女──…甘利ひなた(あまりひなた)が大きな目で上目に見るのは、あたしの友人、奥沢睦(おくざわむつみ)だ。
 この世の愛らしいものをかき集めてきて形成されたようなひなたとは対照的に、赤みがかったショートヘアに少年めいた顔かたち、ユニセックスなシャツとジーンズをさらっと着こなした睦は、夜道を一人歩きしていた女が何度も振り返ってきたことが度々あるという。
 その女達は良い勘している。あたしの後輩をこんなしどけない格好にして胸やら内股やらを撫で回しているのだから、被虐嗜好でもなければ警戒するのは正解だ。


「こんな透け透けな下着つけて、ニヤニヤして恥ずかしがる女の子は見たことないなぁ」

「んっ……だって睦さん、カッコイイんだもぉん……」
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