この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
貴女に溺れて彷徨う
第2章 醜いものは塗り隠せばいい
常連客のエピソードに相槌を打ち、あたしはアイスティーを傾ける。
飲み屋でまで美味しいソフトドリンクを賞翫したがる客は一定数いるようで、この店は茶葉までこだわっている。今日はペパーミントベースのハーブティー、さっぱりとした水出しだ。
「結局、結婚したって法で心まで縛れないよ。そこまで人の心が聞き分け良いなら、独身だって、掃いて捨てるほどの破局カップルは出ないでしょ。まして男と付き合ってる女なら、第二勢力の同性が出てきたら、そっちに揺れるのは仕方ない。心も身体も近い分、価値観や性格の違いはあっても、異性という壁はないんだもん」
「真剣なお付き合いされてるノンケカップルに怒られますよ。でも、ひぃは莉世さんのそういう考え方、好きです。言われてみたら納得します」
「でも莉世は、マッチングアプリで本命を探してたんだろ。その、稲本さん?彼女に、あまりのめり込まない方が良いんじゃない?」
「何で」
「この前のお客さんは、ひと握りの成功例。特にその稲本さんは、筋金入りの真面目ちゃんみたいじゃないか。莉世に本気になったとしても、彼女みたいな人は、自分を責めるだけになる。向こうのご主人や両親もいるし、面倒だよ」
「それは、そうだけど」
睦が心配してくれるのは分かる。
せりなほど腐れ縁ではないにしても、彼女も付き合いは長い上に、誰より本音で語れる仲だ。