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貴女に溺れて彷徨う
第2章 醜いものは塗り隠せばいい

 大瀬が帰ると、今日の定時になっていた。


「相変わらずガチ勢ですね。大瀬様、ほんと美人さん……莉世さん、ああいうお姉さんはタイプじゃないんですかぁ?」

「どっちかと言えば抱かれたい」

「やっぱり!」

「本当やばいよね、美人で優しくて格好良くて明るくて。お化粧も上手すぎ。コスメ達が喜ぶよー。お買い上げの品数からして、ステイタスまで高そう」

「どこかの社長さんだったりしてー。いっそ候補にしちゃうとかアリじゃないですかぁ?莉世さんもせっかくの美人さんなんだから、セレブ入りしちゃいましょう!」

「無理無理っ。セレブは顔でなれるものじゃないよ。それに本当に社長だったら、一応あたし一般人だし……」


 もとより身分違いでなくても、今のあたしはどれだけのもの言う花が現れたとしても、真剣にはなれない。

 あたしは出勤してきたTenue de bonheurのもう一人のスタッフに引き継ぎを済ませると、別れを惜しむひなたを残して店を出た。
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