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貴女に溺れて彷徨う
第2章 醜いものは塗り隠せばいい
* * * * * * *
薄ピンクとアイボリーのフォーマルな制服から、原色の花柄にラッセルレースの重なったギャザーがたっぷりと寄せられたスカートが蝶のように揺れるワンピースに着替えたあたしは、帰路とは別の目的地へ足を向けた。
学習塾の正門は、小中学生達で賑わっていた。
こうした施設に通った経験のないあたしからしても、どこか懐かしい雰囲気だ。
「あらぁ、稲本さんっ」
浮ついた女の声が聞き親しんだ名前を呼ぶのが聞こえて、あたしは振り向く。
遠目にもよそゆきだと分かるほど着飾った女達が、よく知る地味な女に話しかけていた。全員、あゆみの同級と思しき子供を連れている。
「今帰りですか?」
「はい」
「三者面談どうでした?ウチは気を抜かなければ◯◯中学を主席で合格出来そうだと、言っていただけましたのよ」
「まぁ、田中さんは良いわねぇ。ウチなんて◯◯くらいしか合格は保証出来ないそうなんです。あすこ学費が高いのよ。お嬢様学校で有名だから、やたらお金がかかるのよ」
「良いじゃない、◯◯なら頭良いし、女の子はああいうしっかりした校風の学校へ入れた方が安心よ。何より楠原さんのご主人はお医者様。そんな謙遜されなくても、学費なんて屁でもないでしょう」