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貴女に溺れて彷徨う
第2章 醜いものは塗り隠せばいい
「そうそう、稲本さんはどうだったの」
「ウチ、ですか……?」
「訊いては失礼だったかしら」
「ごめんなさい、稲本さんは人と話すの苦手だったわね。面談も大変だったでしょう。せめてあゆみちゃんがウチの娘くらい目立つ成績だったら苦労なさらなかったでしょうに、パッとしないのは稲本さんだけじゃないものねぇ」
「いえ、失礼というわけでは……別、に……」
「と、とにかくどこか受かると良いわね。お仕事はクリーニングだったかしら。このご時世、ウチみたいに知識の広い家政婦のいる家庭も珍しくないし、経営も大変でしょうから、安くてそこそこ有名な学校へ行けるよう祈っていますね」
「鴨山さん、失礼よ」
「みなぎ」
あたしは猛獣に睨まれる小動物よろしく背中を丸めた元同級生に、声をかけた。
鴨山という名らしい、顔面白塗りの女の両脇で笑いをこらえる母親達には目もくれないで、あたしはみなぎに腕を絡める。
「迎えに来ちゃった」