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貴女に溺れて彷徨う
第2章 醜いものは塗り隠せばいい


「失礼しました。彼女の親友で、高垣と申します。大切な大切な彼女が目立たないだの貧民呼ばわりだのされているのを見かけて、悲しくて……」

「私達、別にそういうつもりじゃ──…」

「みなぎほんとは可愛くて、五月蝿いほど明るいんです。でもあゆみちゃん、来年受験じゃないですか。しっかりした家庭のお嬢さんとしてあゆみちゃんを育てるというのが、みなぎ達の親としての方針なので、わざと塾ではダサくしているんです」

「そうなの……?稲本さん……」

「そうじゃなかったら、あたしみたいに派手で可愛い親友は出来ません」

「く……悔しいけど、否定出来ないわ」

「本当に垢抜けているわ。脚、細っ……どっかの店員さん?」

「今後とも彼女と仲良くして下さいね。お姉さん達も十分素敵ですよ、華やかで」

「そうかしら、ほほ」

「まぁ、稲本さん、意外と私生活は充実していらしたのねぇ」
 

 女達の微笑みが空っぽな扞禦に過ぎないのは、見て分かる。
 高校時分、みなぎを見下していた派手なグループの女の子達も、目前にいる女達も、重要なのは他人の機嫌で、互いを監視し、上品なうわべにくるんだ牽制でしか均衡が保てない。


 こうも非生産的な時間に、みなぎとの有限の時間を削がれてたまるか。


 あたしは適当に挨拶し、母娘を連れて門を出た。
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