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貴女に溺れて彷徨う
第2章 醜いものは塗り隠せばいい
問題は、そのあとだ。
あたしはみなぎに文句をつけた。生来の性格を踏まえれば当然なのに、思わずあたしは気弱な彼女を非難したのだ。
「それでせっかく予定通り上がってストーカーに行ったのに、喧嘩になって戻ってきたんですかぁ。ひぃの顔見て、元気出ました?」
「……悪いのはあたしじゃないし。落ち込んでもいないし」
営業終了後の百貨店のバックヤード。
マネキン顔負けの女達が帰り支度を進める更衣室で、あたしはひなたの着替える衣擦れの音を聞きながら、塾でのことを話して聞かせた。
スピーカーから流れる業務連絡より、多種多様なオードトワレと汗の匂いが主張している密室は、まるで生きた花々の咲く温室だ。
まもなく、青いパフスリーブに白いフレアスカートという格好に着替え終えたひなたが、仕上げにほどいたウェーブヘアの天辺にリボンカチューシャを乗せた。
「お待たせしました。帰りましょ、それか睦さんに夕飯作ってもらいますぅ?」
「会いたい?」
「んー……ひぃは、どっちでも」
部屋に作り置きしている惣菜があるから一緒に食べて欲しい、と、あたしはひなたに提案した。すると本当にどちらでも良かったらしく、彼女は快く頷くと、恋人同士を気取った風にあたしに腕を絡めてきた。